デザインの話

見えない世界の体験。視覚障害者の疑似体験を超えた対話の世界

90分間、暗闇の中で目が見えない体験をするワークショップ「ダイアログ・インク・ザダーク」。
14年越しの思いから、ようやく体験できました。

8名のメンバーを案内してくれるのは、盲目のアテンドあけぴーさん。
私たちの頼りは一本の杖と、音、触る事のみ。真っ暗闇の中、9名で輪になって座りキャッチボールをして、音と声の情報で空間的な位置が把握できる事に驚きます。

それから手すりと点字ブロックを伝いながら電車に乗って、ボックス席に座ります。
物語は会津漆器の工房を訪ねる旅。

電車から降りて工房にたどり着き、砂利が敷き詰められた庭を歩き、縁側に腰を下ろし靴を脱いで畳の部屋に入ります。そこでトチの木から漆器が出来上がるまでの製造工程を、解説を聞きながら器を手で触り確認します。
脱いだ靴は探せるのだろうか?という不安も、脱いだ時に隣にいた人の名前を覚えていて、その通りに8名が縁側に並ぶ事で、すぐに見つけることができました。

漆器職人さんの部屋に移動し、8名が漆の椀を手に持ち職人さんが器に会津の水を注いでくれ、その水を頂き漆器の口当たりのやさしさをくちびるで感じます。

暗闇の中でも感染対策は万全。物を触るたびに、アテンドさんが一人ずつ手に消毒スプレーをしてくれたり、移動して座った椅子の下に用意された除菌シートで手をふきそれをゴミ箱に入れたり、、、と今では日常となったことがこの世界でも行えられているのことにも驚き。

道中、取り残されてはいけないので、皆がどこにいるかその声を聞き、自分も声を出し私はここにいるアピールをしながら、8名の意識がまとまっていきます。
メンバーは初めて出会った人ばかりですが、ニックネームで呼び合い名前も覚える仲になりました。

盲目のアテンドさん、本当に頼もしく彼らの認知能力に驚かされます。
全員が視覚のない世の中に暮らしていたら、今の人間関係もまた違った力関係になるんだろうなとも思いました。
視覚に頼る仕事をしているからこそ、視覚の奥にある本質が大事であることを感じました。
視覚以外の情報で構築された世界。この新しい体験は、私の記憶にしっかり刻まれました。

ダイアログ・ミュージアム「対話の森®」
https://taiwanomori.dialogue.or.jp/

トチの木から、漆器ができあがる過程

 

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