生きること

福島第一原発「原子力明るい未来のエネルギー」にみた悲しみ

東日本大震災・原子力災害伝承館で展示された写真

今年5月に訪れた東日本大震災・原子力災害伝承館。そこで目にした「原子力明るい未来のエネルギー」という標語が大きく掲げられた商店街のアーケードの写真に衝撃を受けました。

私の知らなかった真実を知る機会を得た旅。
東京からの福島へ向かう常磐自動車道の窓からは、並行して走る大きな送電線の光景が目に焼き付いています。

1970年代、高度経済成長の中心にあった東京。その東京で消費する電力を賄うため、福島第一原発が建設されました。受け入れを決断した福島のこの地域も、それ以前はとても貧しく少しでも豊かになるためにと原発を受け入れた経緯がある事を、語りべの方のお話で知りました。

やがて日本経済は大きく発展し、福島の人たちは自分達のまちで作った電力が、東京の経済活動を支えていると誇りを持っていきました。そして子どもたちはその教育を受け、まさに「明るい未来のエネルギー」と描かれていったのです。

そして迎えた2011年3月11日。東日本大震災。
ここで明らかになったことは、この伝承館でも明記している通り、福島第一原発の事故は天災ではなく人災であったことです。
その責任は、国の責任でもあり、福島県の責任でもあり、東京電力でもあると思います。

ただ忘れていかないのは、福島第一原発で発電された電力は、東京で使うための電力であったこと。東京で経済活動をし恩恵を受けてきた私たちが、そのリスクを福島に押し付けていたことです。
それと同時に、この時代に生きてきた人たちが、未来に対して犯した過ちでもあるもです。

過去から学び、反省をし教訓として生かすことが、未来にとって大事なことです。
「誰が」に固執するのではなく、「何が」問題であったのかを冷静に受け止め、人類として同じ過ちを起こさないために変革する勇気を持ち、次の未来を切り開いていくことが重要だと思います。

脱炭素が叫ばれるようになった2021年、再生可能エネルギーにシフトしエネルギーの転換期の中にいることに明るい希望を感じます。一方で、小型原子炉の開発という心配なニュースも耳にします。原子力発電は確かにCO2の排出はないかもしれません。でも地球環境の問題は脱炭素だけではありません。50年後、100年後、私たちの子どもや孫の世代の安全に思いをはせ、さらには地球の未来を守るために正しい選択をしていかなければなりません。

未来を向く一方、過去の過ちに対する責任から逃げることも許されません。福島第一原発の廃炉作業は、私たち人類にとって責任を果たすべき重要な仕事だと思います。

地球という資源を借りて生活をしている私たち人類。傲慢になることなく、自然と共存する生活の仕方をしていけることを願っています。

参考・引用:
認定特定非営利活動法人 ふくしま30年プロジェクト主催オンラインセミナー「福島第一原発事故の教訓を伝える」後藤忍准教授セミナー資料
日本大震災・原子力災害伝承館webサイト

 

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