この作品は、作者が大学院在学中に経験した”出産”をモチーフとし妊娠中のデータをもとに構成したインスタレーションである。
生命体としての胎児を象徽した一つのオブジェ 胎児を身ごもる母親の映像 胎児の心臓音と母親の心臓音
それぞれが奏でる共鳴は、機能としての身体の認識を超え母親と胎児の共生の神秘性、あるいは鑑賞者の根源的な記憶とも触れ合うものになるかもしれない。
このインスタレーションは,2つのプロジュクターから投影された画像によって 構成されている。1つは光のオブジェとして,構造体の内部から白色アクリルの球 面に,制止画像のスライドをスライドプロジェクターから投影したものである。
そこで扱われる制止画像とは,妊娠中に撮影した胎児の超音波断層写真であり,妊娠2ケ月日から臨月までの胎児の姿とデータが順に投影されてゆく。そこで使用されている回転式スライドプロジェクターは,10秒間隔で1枚ずつ送られるようタ イマーに接続されている。
プロジェクターからの光は,まずプロジェクターの前に設置された 鏡に反射し,角度を変え上方へ向かう。そして,スクリーンとなるア クリル球面に到達する途中に,水の入った透明アクリル容器を通過す ることで,アクリル球面には,スライドプロジェクターの画像がゆら ぎなら写り,同時に水を介して起こる光の現象が現れることとなる。 そこで起こる水の現象とは観賞者がアクリル半球に触れることでその 下にある水に振動が伝わり,水面に波紋が起こることによるものである。 それに対して,もう一つの画像とは,妊娠中の自らの腹部をビデオにて撮影した 映像をもとにビデオプロジェクターで壁面に投影したものである。そこで写し出さ れる腹部とは,胎児が中で動く度に,その動きが皮膚を通じて外に現れる状態のも ので,腹部のシルエットが大きく歪むのが見て取ることができる。 その映像は,オブジェの背後の壁面に写し出されるのであるが,オブジェの前に 立った観賞者は,背後から投射されるプロジュクターの光の影となり,腹部の映像 の中に観賞者のシルエットが浮かび上がる。さらにスクリーンの両側に設置されたスピーカーから,母親である私の心臓音が会場に鳴り響く。 素 材:水・アクリル容器・木・鉄パイプ 機 材:ビデオデッキ・ビデオプロジェクター・スピーカー・ カセットデッキ スライドプロジェクター(スライド84枚オートチェンジ)、 オムロン ロータリータイマ(8チャンネル)